『突入作戦』


クレイニンの護送後、冒険者達の間には、何か予感のようなものがあった。偉大なる魔法使いの目覚めにより大きな何かが始まろうとしている。

クレイニンはボケボケの駄洒落スキーなだけではない。ブリタニアで一二を争う魔法使いである。そして、今や崩壊してしまったブリタニア評議会の数少ない生き残り、しかも政権の中枢に居た男。
いわば、ブリタニアの政治の善の象徴なのだ。
クレイニンなら。クレイニンならなんとかしてくれる!
しかし、果たしてクレイニンが今どこでどのような状態にあるのか全く解らない状況では、冒険者は大きな不安を抱えざるをえなかった。カスカがクレイニンの無事を保証しようとも、カスカが「敵」であったら何にもならない。そしてこのカスカ・・・今や国王代理となったこの男、時間がたてばたつほどキナ臭さが濃厚になってきているのだ。
ああ、クレイニン、どうかご無事で!

そんな中、突如カスカが冒険者たちに召集をかけた。
「諸君、わしと共に新たな歴史を作っていこうではないか!」


なんでも、各街にクリムゾンドラゴンを送り込んでいる魔法装置を壊すために協力を要請しているらしい。そ、そんな魔法装置であの大軍は送り込まれていたのか・・・。
いや、しかし。
実はクレイニンの目覚めと前後して各街の魔法障壁が復活していた。今更、という気もしないではない。
胡散臭さの漂うカスカの呼びかけだが、行かないわけにはいくまい。

そうして冒険者たちがユーのエンパスアビィ前に集まった。



カスカ登場と共に罵声が飛ぶが、カスカは冒険者を前に話し始める。



まず、カスカはクレイニン護送の件について冒険者に謝意を述べた。
・・・ほんっとぉに・・・ほんっとぉぉぉに、クレイニンさんは無事なんだろうな?え?信じるぞ?信じるぞ?・・・信じようが疑おうが、もうどうしようもないんだがな。
それからカスカは「クリムゾンドラゴンを送り込んでいる現場を急襲する!」と冒険者達に告げると、ゲートを開いた。このゲートの先にあるものを破壊すれば、永久にクリムゾンドラゴンによる侵攻を止めることができる!と。

カスカがどんだけ怪しかろうと、とにかく・・・街を再びあのような惨劇の場にしてはいけない。よし、いくぜ!

とゲートをくぐった途端、例によって固まるのはお約束。

そこは、今まで見たこともないダンジョンであった。いったいここはどこだろう?慌ててダンジョンを走ると、前方で既に戦いは始まっていた。
戦闘民族として名高い大和の民。壁のように立ち並ぶモンスターと一進一退の攻防を続けていたが、しだいにじりっじりっと前に押し始めた。



白い黒閣下の姿が見える。あ、いや、黒くないから黒閣下じゃねぇ、白閣下、いや、でもさっき赤いのもいたからそれだったらさっきのが赤閣下、でもそれじゃぁ赤デーモンと混乱しそうだし、え〜と



ええい、そんなこたぁどうでもいい



冒険者達は押す。押されて一時退避してもすぐに



押し返す。



数の暴力をナメんな!(間違い



中央の部屋の一歩手前までたどりつくが、そこの扉が開かない。ここのダンジョンは中央の小部屋を中心として左右対称になっているようだが、反対側からも攻めなければならないのか?



体力を削る黒い炎を乗り越え、雑魚を蹴散らし冒険者達は走る。



待ち構えている強大な敵を一丸となって攻撃。そしてダンジョン内のモンスターをすべて倒すと中央の小部屋の扉が開いた!



中央の小部屋のどまんなかには、赤く光るblood sigilと名のつけられたものが。カスカが言っていた「あるもの」とはこれを指すのだろう。しかしこれをどうやって壊せと?手持ちの斧でタゲってみてもびくともしやしねぇ。ああだこうだ言っていると、それまで一体どこにいたのか、カスカが姿を現した。もしかしてこっそり後ろから付いてきていたのか?



カスカは冒険者に下がるように指示すると、その赤い物体が砕けるように念じた。



一面白い光につつまれたかと思うと、赤い物体は砕け散った。話によれば砕けた破片を拾うこともできたそうな。

かくしてダンジョンから抜け出てユーのエンパスアビイ前に戻ったカスカと冒険者達。自らの指揮により大きなことを成し遂げた高揚感からかカスカは今までの鬱屈を晴らすかのような演説を始める。



「 *こほん* 諸君、 このクリスタルの破壊によって、我々の土地を混乱に落としいれ引き裂いた侵攻は止まるであろう。もしも侵攻軍が残っているならば そやつらは衰えて、死に至ると思われる!」

侵攻は既に止まっていたんだが。まあ、これで本当にクリムゾンドラゴンが来ない、と言うのならば、それは大歓迎である。

「わしは確固たる信念を持ち あいまいな批判にも耐え、 他の希望が霞む中、平和をもたらしてきた!」

ああ、確かに、我々はカスカを認めてこなかった。明確な証拠はないが、どうにも胡散臭い。理由を明示できないという点から「あいまいな批判」とされても仕方ないかもしれない。
しかしその後、カスカは更に調子に乗り始める。



「誰かがかつて言った: 「高名なあの魔術師こそが、ブリタニアに最良なことを知っている」と。
馬鹿が!二人とも馬鹿だ!
クレイニンの手助けなしで、敵は我が足元にひれ伏したのだ。クリムゾンドラゴンの不可解な力はこの王冠の前に屈したのだ!」

ちょ、言うに事欠いてクレイニン批判か! しかし「高名な〜」は誰が言ったんだろう?どこかで聞いたような聞かないような・・・まあ、それは後から調べるとして。クレイニンなんぞ役立たず、そういいたいのか!?手柄は全部自分のものだと!?

思わず口を開こうとしたとき、背後から猛然たる勢いで詰め寄る赤いドラゴンの姿が。

く、クリムゾンドラゴンじゃねぇか!



上の図だと、カスカが調子ぶっこいているのをクリムゾンドラゴンが見ている「志村〜後ろ後ろ」状態。

クリムゾンドラゴンは轟然とカスカの前に立ちはだかると嘲笑した。
「貴様のようなものに屈するって?虫けらどもが!」

カ、カスカぁっ、あんたさっき、クリムゾンドラゴンはもう来ないって言ったじゃんかぁぁぁ、とカスカの方を振り返ると



この期に及んでうろたえながらガードを呼ぶカスカの姿が。使えねえええええ



そのようなカスカを尻目に、ドラゴンヘルムをかぶった青い服の女性がクリムゾンドラゴンの前に立ちはだかった。誰ですかあなたは。
「定められし運命をもつ者たちよ、すぐにここから逃げなさい!」
冒険者に呼びかける青い服の女性。
彼女を見て歩みを止めるクリムゾンドラゴン。
「貴様、どうやってここに来たのだ」
どうやら彼女はクリムゾンドラゴンと敵対する存在らしい。
その隙を縫って



カスカ逃亡。



おおおい、ひとり逃げんなああ



カスカが醜態を晒している間も青い服の女性はクリムゾンドラゴンと対峙し続ける。そしてクリムゾンドラゴンが引かないと知ると、彼女はその正体をあらわにした。



銀色に光る巨体。これは・・・プラチナドラゴンか!



クリムゾンドラゴンを始めて見た時、すっげぇ〜と感動したものだが、こいつぁ輪をかけて凄いや。



プラチナドラゴンが攻撃をしかけたのか、激しい炎が立ち上ると、クリムゾンドラゴンの姿は消えていた。
プラチナドラゴンは冒険者にこの場から立ち去るように言うと、足早に姿を消した。

一体、なんだったのだ!?
カスカが言っていた、「これを壊せばクリムゾンドラゴンは来ない」というのは嘘だったのか?しかしカスカは慌てふためいていた。カスカとしてはクリムゾンドラゴンの襲来は予想外だったのだ。
そしてクリムゾンドラゴンとプラチナドラゴンの戦いの行方は?
そして、有頂天でしゃべっているところをクリムゾンドラゴンに嘲笑われ、身も蓋もなく逃げ出した小物決定のカスカは今後どのような行動をとるのか!?