魑魅魍魎が跋扈するハロウィーン。死者と生者の境目が薄くなり、見えざるものが地上に溢れかえる。狂気の季節だ。
その混沌に乗じて悪魔族がマジンシアに攻め入ってきた。
何が困るって。
今、筆者の家はマジンシアにあるのである。
知り合いが引退する際に「一番UOを続けていそうな人」という理由で譲り受けたこの家は、一歩外に出れば圏内という超好立地。それまで住んでいた「一歩外に出れば鯖境界線」とは大違いなのだ。
それが、突如の悪魔軍襲来、リコールin不可、ムーンゲートも使えない・・・おうちに帰れないじゃぁないか。
そのうちトリンシックから渡し舟が出るようになったが、手間がかかることには間違いない。
周りの方々からは「つ、強く生きるんだよ・・・」と慰められたが、かくなる上はこの状態を楽しまなくては勿体無い!
ということで、悪魔軍が襲来する前に自宅を砦に改造、ついでにベンダーを置くことにする。
ベンダー商売で「一攫千金を狙うぜ、ぐははははははっ」というわけでもなく、どう考えても不便になるであろうマジンシアの地で、少しでも便利に使ってもらえたら嬉しいな〜というボランティア精神と、「・・・こ、この状況でベンダーかよっwwwww」と、通りすがりの人に笑ってもらえるといいなぁという気持ちからの設置であった。結局求める物はネタなのだ。
「これこれこういう理由で、レンタルベンダー置かない?」と声をかけてみると、数人がのってきた。「ポーションベンダー」や「ドラ鎧ベンダー」「アーケイン服ベンダー」など役割を適度に振ってベンダを設置。
謎の肉パイ屋にも声をかけた。
この、黒い装束の謎の肉パイ屋は、日本シャードのあちこちでベンダーを出している。
売っているのはミートパイ。
「さっきまで蠢いていた、新鮮な肉で作られているミートパイ」である。
本人と同じ衣装をベンダーに着せているわけだが
この装束だと、幸せいっぱいの結婚をする二人に祝辞を述べても
不吉以外のなにものでもない。しかしそれが肉パイ屋なのだから仕方が無い。
まぁ、それはともかく、マジンシアの家のベンダーはこのようになった。
家の前で、色違いで鳴いているのはあまり気にしないように。
侵攻が始まると、筆者がUOにログインすると真っ先にしなければならないのが、家の周りに出没する悪魔族やアンデッドの掃除であった。
日に日に悪魔軍の侵攻は激しくなり、次第にマジンシアの街は破壊されていく中、ベンダーはバカ売れするという事はないが、着実に売り上げを伸ばしていく。
果たして肉パイが売れていったかどうかは不明だが。
そのうち、ヴォイドデーモンやライトデーモンがマジンシアの街を蹂躙し始めた。
ヴォイドデーモンはブラックホールを作り出し、PCを飲み込んでは違う時空に吐き出す。
ライトデーモンは爆発と同時に街を破壊する。
・・・まさか、プレイヤーの家まで破壊されないだろうな。
嫌ぁぁぁな予感が脳裏をよぎる。
これらのモンスターにベンダーが襲われたらどうなるだろう?
以前、オフィディアンバーサカーに黄色ネームNPCまでもが殺害されたという噂を聞いたことがあるが・・・・。
そしてある日。
ベンダーの一人が家の敷地から落ちていた。
うむぅ、爆破に巻き込まれたか・・・。
ベンダーをダブルクリックすると
持ち物を残して、力尽き、息絶えてしまったベンダー。
エイミィィィっ、エイミィィィィッ
その日、マジンシアへの侵攻は更に苛烈を極めた。
そして次の日。
・・・・いねぇ!
ベンダーは一体どこへいってしまったのか。
そのうち、情報が入り始める。
「どっかの墓場で、ベンダーらしき人影を見たような」
墓場?なぜ。
推測としては、ヴォイドデーモンが出したブラックホールに吸い込まれ
吐き出されたのか。
コーブの墓場で発見。
やはり、ベンダーの持ち主がWクリックすると
荷物を残して息絶えてしまった。
マーガレットォォォッ、マーガレットォォォォッ
そして更にジェロームの墓場でも。
ここでは、二人のベンダーが同じ位置に立っているのが発見された。
一人のベンダーをWクリックし、ベンダーが息絶えた跡に、もう一人のベンダーが立っていたのだ。
重なって見えなかったのだね。
そしてトリンシックの墓場でも。
ベスパーの墓場にあるこの建物は、特に陰惨な感じがする。
墓場にぽつんと立ち尽くすベンダー。
ケイト、ごめんよ・・・と言いながらWクリック。
するとその下からは
死神が現われた。
もとい。しかし、墓場に居てもなんの違和感も感じられない肉パイベンダー。
肉パイ屋のオーナーと連絡が取れなかったので、このベンダーを回収することが出来なかった。仕方がなく、肉パイベンダーをベスパーの墓場に放置したままマジンシアに戻ることになった。
その後、マジンシアの家では「いないはずのベンダーを認識」などのバグが起きたので
GMに連絡、相談するハメに。
その節は大変お世話になりました、お手数をおかけしまして本当に申し訳ございません(見ていないだろうがGMさんへ)
その結果、肉パイベンダーだけが戻ってきたの図。
出来る事ならば、そのまま墓場に放置しておきたかった、というのが筆者と肉パイ屋の共通見解だというのは言うまでもない。
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