『評議会殺人事件』
vol.1

事件の第一報はブリティン第一銀行のタウンクライヤー、アガサからもたらされたわけではない。事件の重要性を鑑み、アガサの定位置からそう遠くない場所に事件特報タウンクライヤーが立ったのだ。
彼は恐るべき事件の発生を市民に伝えた。






職業的縄張り意識が刺激され、いらだつアガサ。

首都ブリティンは過去に何度か襲撃にあった事はあると言えども、それでもなお、他の街と比べると治安が安定している都市である。
更に王城内部は幾重にも警護されており、内部で一般人が魔法を唱える事もできない。

あり得ない事件があり得ない場所で起きたのだ。

NPCカラーの布を揃える為に山賊キャンプを襲い、屍体の山を積み上げるのとは比べものにならない。・・・多分。
慌てて王城内に駆け込み、タウンクライヤーが言っていたジャスパーという捜査官を探す。
調べてみるとこのジャスパー、大昔のFoAの事件でも活躍した捜査官だとの事。



なんでエルフ。転生したのだろうか。
彼は遅々として進まぬ捜査にいらつきながらも我々冒険者たちに捜査を依頼してきた。
おう、協力するとも。
彼はいくつもの驚愕的な事実を告げたが、ひときわ筆者に衝撃を与えたのが



アイリーンと魔法ネズミのシェリーが行方不明になったという事だった。
あのトリンシックのかわいらしいお嬢さんが?
そして・・・シェリー・・・。

思い起こせば2008年の正月。
例年のごとく、正月ともなるとブリティンの近くの広場に忽然と異国情緒溢れる建物がそびえ立つ。ミノックのスーパー大工、ポーレットさんは宮大工としての腕前も確からしい。

さて初詣初詣、と異国の建物に赴いた筆者。
するとそこには魔法ネズミのシェリーと、そのお供とも思われるネズミが数匹、参拝に訪れていた。



そ〜か〜、2008年は子年だもんな〜、2009年は丑だけど、牛なNPCはさすがにいねぇよなぁ、やっぱミノ・・・などと身も蓋もない事を思いつつもシェリーに挨拶。
「あけましておめでとうございます、シェリー。」
するとシェリーは筆者にこのように返してきた。
「あら、あなたがピンクの女の子ね。アガサから聞いて知ってるわ。」

ぐごほっ
エレイン女史に続いてシェリーにまで個体識別されてしまった。

エレイン女史に声をかけられるだけでもよっぽどな事であるが、シェリーったら本編ウルティマにも登場する超ラブリーアイテムもといアイドル。そのシェリーに知られているなんて。
しかし、ピンク・・・本人としてはそのようなファンシーな色合いではなく、赤オスタカラーのつもりである。

様々な思いが心中に去来したものの、その後シェリーがお腹がすいた、とその場を去るまでのんびりとブリタニアについて語った。緊張しまくってしまったが、素晴らしいひとときであった。
そのようなわけで、シェリーと筆者は少しばかり関わり合いがないわけではない(と思い込んでいる)。
シェリーが苦況に陥っているというのならば、何があろうと手をさしのべなければなるまいて。
関わり合いが無くても喜んで首をつっこんでいたであろうことは言うまでもない。



昔気質の捜査官はよく言ったそうな。
「現場百遍」
現代の科学捜査の現場においてもそのように言われているかどうかは不明だが、最初に現場ありきである。
足を踏み入れた殺人現場には凄惨な光景が広がっていた。



フランシスコ卿の亡骸はそれは酷いものであった。



なんと無惨な死に様。

筆者は過去に「緑閣下にスカートだけルートされた死体と化したことがあるが、それに匹敵するほどの無様な死に様である。
周りの亡骸はフランシスコ卿と共に評議会に出ていた評議会委員の面々との事。

・・・どうやらエレイン女史の亡骸は無い。あの地味派手な服装が倒れていたらすぐにわかるであろう。

彼女は評議会のトップであるとされているが、「評議会」との折り合いは悪いらしいことはこれまでも見て取れていた。推測するにエレインは内閣、評議会は議会の役割をしめているのであろう。ゆえにエレインは「評議会員」には含まれていない。
ブリタニアは議院内閣制ではないが、エレインは政務を評議会に諮らねば動く事はできない、と思われる。
ブリタニアの権力相関図は国王であるブリティッシュが居なくなってからかなり混沌としているらしい。フランシスコ卿を中心とする「貴族からなる評議会」と内閣であるエレイン達との間には静かなる権力闘争が繰り広げられているようだ。
ここ数ヶ月、フランシスコ卿を中心とする評議会の力が増大していった事はBNNだけでも窺い知れたのだが・・・。
評議会の主立った面々が殺害され、政情は一気に流動化している。



フランシスコ卿の死体に手を触れる。
フランシスコ卿に対する筆者のイメージは

これ。
仕立てのいい金のかかっていそうな服も、幾重にも身にまとった脂肪も、凶悪な刃を前にしては何の盾にもならなかったようだ。

AR 3 FR -15 CR15

フランシスコ卿の懐には彼の血で染まった巻物が。このままではとてもではないが読めない。これはジャスパーに見せることとする。
机の上にはこんなものが。



犯行声明か?
この事件を起こしたのはFOAなのだろうか。
FOAの残党がヘイブンでアルマゲドンを唱え、ヘイブン崩壊の惨劇をもたらしたことは記憶に新しい。
更には彼らがイルシェナーのブラッドダンジョンに居を構え、そこに踏み込んだアベリー隊長とその部下達が命からがら爆破から逃れた事も聞き及んでいる。

・・・まぁ、即断はよそう。彼らに罪を負わせるべく、何者かが策を弄したのかもしれない。
アベリー隊長も行方不明だということだし・・・カスカも行方不明者の中に名を連ねていたか。
彼らの身柄も心配である。

後ほど、その場に残されていた遺体すべてを検視する。



全ての死体が「鋭い刃物で刺し殺されている」。
一体残らず。
実際には「出血多量によりショック症状を起こし」とか「臓器不全で」など死因はさまざまなのであろうけどね。そのへんまで検死できたらと夢想はするが、250枚に及ぶ検死報告書を提出されても困るからほどほどに。

そしてその場に落ちているのはガラスの破片。
「鋭い刃物」「ガラス」とくれば、



これっすか。
結局筆者がもらいそこねた、もとい、持つことを拒んだこの背徳の剣による犯行か。
FoAとシャドーロードは結びついているというのか。

ふと表に目を向けると、壁のむこうの中庭に血染めの足跡が。



いったいこの壁をどうすりぬけたのだろう。

とりあえず現場から引き上げジャスパーに報告をする。すると血染めの手紙から血を取り除く技術をもった錬金術師を紹介された。
おつかいクエストの始まりである。

ムーングロウを疾走し錬金術師を発見



さらに血のよごれの除去のための素材を探してこい、など、奔走させられる筆者。
まぁ、このくらいの苦労はいとわんがな。



ほとんど騒音と化している、エルフへの転生クエストNPCの横をすり抜け



司書さんの手を借りて、解読に成功。
なんとその内容は、アイリーンからフランセスコ卿への危機をしらせる便りであった!
評議会とフランセスコ卿に重大な危険が迫っている、アイリーンとシェリーもブリティンを離れる。
トリンシックのアイリーン宅に来て欲しい・・・・敵は城の中にいる!

その知らせも空しく、フランセスコ卿、及び評議会は惨殺されてしまったというのか。


くらくらする頭を押さえながらブリティンに戻ると、そこに知り合いの顔が見えた。
「おや、こんにちは。」
丁寧に頭を下げてきたのは、ブリタニアにおいて生産者を目指すものは必ずといっていいほどお世話になっていると言われる、とあるサイトの管理人氏であった。つか、生産者なら見ておかねばモグリだ、と言い切ってしまうぜ、鬼のようにデータの揃ったサイトである。了解を取っていないので名前は特に秘し、大和の守護神、と呼んでおこう。
すでに一通り捜査を済ませてしまったという大和の守護神であったが、どうも筆者の動きがあまりに心もとないものであったらしい、筆者を見守るかのごとく、同行することになった。



さて、トリンシックでアイリーンの家を探さねば・・・一体どこだろう。やはり一軒一軒しらみつぶしに探し出さねばならないのだろうか。
背後で見守る守護神は、何も言わずに微笑みながら見ている。
ヒントをっ、ヒントをぷりぃぃぃぃずっ

守護神にそんなこと言い出せず内心の葛藤と戦う筆者の横を、どうも同じ目的を持っているらしい人が駆け抜けていった。
当然のごとく、ついていく。こんな筆者を根性なしと呼ばないでほしい。

アイリーンの家は、そこから程遠くない、銀行から数分といった一等地であった。
早速家宅捜索を始める。程なく彼女の書いたらしい日記が見つかった。



日記には、誰も正体を知らない不思議なフードの男が、フランセスコ卿がアベリー隊長に連れ出されている間に評議会で会合をもっていたこと、ブライアンについての情報をトリンシックのアンセルムから入手すること、そしてフードの男と評議会の一人が、アイリーンとシェリーの殺害を計画していることが書かれていた。
ブライアンというのはFoAのメンバーの一人である。アベリー隊長がFoAを襲撃した際に隊長の部下として襲撃に参加、そして自爆して部隊に多大な被害をもたらした。ブライアンもトリンシック出身。トリンシックの大使として、このような事件を起こした者が同郷の者であったことにアイリーンは心を痛めていたらしい。

アイリーンとシェリーは真実に近づきすぎたのだろうか。彼女たちは無事なのだろうか。
おそらくシェリーなら、アイリーンを安全なところにかくまうことが出来る、そう信じるしかない。

アイリーンの家を更に探していると



本棚に、「My Story」という本があった。そう、その本の作者はシェリーである。
大和の守護神は言った。「アイリーンがMy Storyを読んでいたというのは嬉しいですね。」

シェリーはアイリーンに、友情が哀しく凍りついたあの話を語ったのであろうか。お互いに信頼しあい、大切に思いあった二人の胸を引き裂かれるような決別を。彼らはそれぞれ、己の信ずる世界を守るために袂を分かったのだ。