『勇気の鐘(The Bell of Courage)』-2


ドーンが出したゲートは、クレイニンのメモリアル像のすぐ横に繋がっていた。
そんな小さな心遣いが嬉しい。

そうか・・・もうあなたはこの世界にいないのか・・・
軽く黙祷してから 踵を返す。
寂しくなるね。クレイニン、あなたと同じ時代を過ごせて私は幸せだった。



城の前に向かうと、集まった冒険者達が口々に何かを言っていた。



え?何?
・・・死体?
・・・・・・・・カスカ? え?

慌てて足元を見てみると、言われてみれば確かに



うげ、カスカ死んでるじゃん。思いっきり踏んじゃったじゃないか!うわ、えんがちょ!
慌てているうちに、花壇の上に魔法ネズミのシェリーが顔を出す。



ちょ、シェリー、国家反逆の罪でカスカの手の者から逃げ回ってるんじゃないのか!? いくらカスカが死んだからって不用意過ぎないか!?
と慌ててあたりを見回すが、シェリーを捕らえようとする司直の姿は見当たらない。カスカの死によって何かが変わったのだろうか。
シェリーは口々に様々なことを言い出す冒険者を軽くあしらいながら自分なりの見解を話す。



カスカの心が既にシャドーロードと一緒になっていた、か。ふむ。
筆者が考えていると、シェリーは驚くようなことを口走った。





カスカが居なくなり、国王(カスカはあくまで代理なんだが)が居なくなってしまったブリタニア。王がいないと締まらない、ドーンが国王の座にふさわしいのではないか、と。

う〜ん、そのような展開になるであろうことは想像がついていたが・・・
なぁ、シェリー。今まで、ブリタニアの王座は長い間空位だったんだ。しかも私達はかなり長い間(リアル時間で実に三年間!)シャドーロードと直接的、間接的に戦ってきたんだぜ。以前のブラックソンとの戦いの事はさておいて、この一件でドーンの名前が出てから、たった一ヶ月。冒険者の心情としては、ちょっと・・・いきなり感が・・・

しかしシェリーは言いたい事を冒険者に言うと、ちょこまかと立ち去ってしまった。
まあ、ドーンには八徳が備わっている、らしい。王座が自分の使命だと認識すれば名誉の徳にかけて職責を全うするであろう。それは解っている。それが解っているだけである意味十分なのかもしれない。
統治評議会さえもが崩壊してしまった今、確かに政治の中心となるシンボルは必要なのだろう。
問題は、我々冒険者がどう納得するか、なのだ。
よし、こう考えよう。我らが唯一王と認識しているロード・ブリティッシュ、彼を最も知る魔法ネズミのシェリーが認めた人物がドーン。そう考えれば・・・それでも納得しないか。
よし、わかった。ちょい理由有りで本来の姿を現してはヤバいロード・ブリティッシュが性転換して登場、と思い込めば(以下略


ふとある事を思い出した筆者は、まだ喧々諤々と話し合っている冒険者達を後に、城内に入る。
実は以前より、トリンシックのお嬢さんアイリーンが城の地下に潜伏していたようなのだ。城内の一箇所でオールネームすれば確認できる。彼女が居るのは二階でも屋上でもない。
シェリーが出てきた今、もしかすると彼女も潜伏先から抜け出ているのではないか・・・・




まだ居るじゃん。

再び城の前に戻ると、冒険者達はカスカの死体で遊んでいた。



殉死すな!



殉死ブーム。

しかし、カスカの死因はなんだろうか。探偵が検死したものの、死因はわからなかった。

やはり、シェリーが言うように「心がSLと一緒になっており、SLが倒された途端、連動してカスカも死亡」なのだろうか。

もしくは、実は謀殺・・・

例:誰かさんの変装だと巷で囁かれているエニエール

いや、まさか・・・


怖ぇよネズミ怖ぇ

なんにせよ、このようにしてシャドーロードは滅びた。
本体は虚空間にあると思われるので、もしかすると後からひょっこり出てくるかもしらんが、当分はブリタニアで力を行使することは出来ないであろう。

一つの長い長い話が、今、終結しようとしている。

ブリタニアはシャドーロードによって大きな痛手をこうむった。
たくさんの人々が亡くなった。
でも。
失ったものを嘆くだけではなく、前に進まなくてはならない。進むことが出来る。
再び立ち上がる力、それこそが、我々に与えられた最大のスキルなのだ。



さあ、前に向かって歩こう。
とりあえずSA、SAじゃあああ!突き進めアビスへっ



でも、崩壊したまんまのマジンシアの事を忘れないで欲しい、と一言だけ言っておくが。